パチスロを嗜む者だけでなく、世間一般でも高い知名度を誇るジャグラーシリーズ。
全国各地のジャグラーのシマには、初打ちから数十年のベテランまで、連日多くのプレイヤーが集っている。
彼ら、彼女らが求めているものは、ゲームとしての興奮、ギャンブルとしての成果だろう。
当然、その思考は優先されて然るべきもの。しかし、自らの奥底に流れる欲求をじっくりと探ってみれば、きっと様々な「打つ理由」が漂っているはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.42 GOGO!懐古主義者】
■日時:2023年6月某日(土) 13:00
■場所:東北地方・某県某市
■取材対象:AQさん(推定78歳・男性・無職)
※了承を得た上でインタビューしています(フィクションも含みます)
――Youは何しにジャグラーへ?
「あ゛ぁ? なんだ、おめぇは?」
――あ、いや、ちょっとお話を聞きたくて。
「パチンコ屋では、一人黙って打つのが昔からの礼儀ってもんだべ。そだのも分がんねぇのか? 困っちまうわ。なぁ、高橋さん」
――あなたも隣の方と話しているのでは?
「やがましいわ! 大体、最近の若けぇ奴らは何を考えてんだか。リールも見ねぇで、電話ばっかり見てよ」
――スマホのことですか。そういう人も増えました。
「勝負に集中しねぇで、何してんだ? ったく」
――動画などを観ている人もいますけど、機種の情報を調べている場合も多いと思います。
「昔はよ、雑誌を買ったり、自分で色々調べたりしてたんだ。そっちのほうが楽しいに決まってっぺよ」
――そういう意見もあるんですね。
「なんでも便利になりすぎだ。昔なんて、コインを買うにも専用の販売機まで歩いてたんだぞ。あの頃は良かったなぁ。パチスロも昔のほうが良かったわ」
――でも、貴方は今もジャグラーを打っていますよね。
「この台はよ、昔っから何も変わってねぇべ? だから打ってる」
――ずっと馴染みがあるから打てると。
「でも、このMAX BETってやつは要らねぇ。1枚ずつのボタンで十分だわ」
――さすがにMAX BETはあったほうが良いような…。
「……(無視)」
「ほんと、あの頃は良かったわ。店員も怖くてよ、店全体に殺気っつーか鉄火場の雰囲気があったもんな」
――今のホールはダメですか?
「女とイチャイチャしながら打ってるヤツ、あれが一番ダメだな」
――なぜですか?
「なぜって、ダメなもんはダメだべ!」
――明確な理由はないんですか。
「なんだ? オレに文句あんのが?」
――そ、そういうわけじゃありませんが。
「もう気分悪いから帰るわ。ったく、最近はロクでもないヤツばっかりだ。んじゃな」
――あ、このお店はパーソナルシステムですから、コインを持っていく必要はないですよ。
「あ゛ぁ!?なんだそれ? 店員呼んで説教してやっぺ!!」
AQさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。