春夏秋冬、いつの季節でも常に高稼働を維持し続けているジャグラーシリーズ。
今日も多くの人間がジャグラーに集い、レバーを叩くたびにGOGO!ランプが輝く瞬間を待っている。
彼らを魅了しているものは何か。端的に言えばギャンブル的な要素が大きいのかもしれないし、シンプルなゲーム性も一定の割合を占めるだろう。
しかし、きっとそれだけに限らない。人の趣味嗜好を一括りにできないように、プレイヤーの数だけジャグラーを「打つ理由」が存在するはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.38 ジャグラー探偵物語】
■日時:2023年5月某日(月) 15:00
■場所:東京都・某区
■取材対象:AMさん(推定41歳・男性・会社員)
※了承を得た上でインタビューしています(フィクションも含みます)
――Youは何しにジャグラーへ?
「シーッ! ちょっと静かに」
――す、すみません。
「なんか用か?」
――ジャグラーを打つ理由をお聞きしたくて。
「本当はあまり打ちたくないんだけどさ、これも大事な仕事だよ」
――あれっ、業界関係の方ですか?
「悪いけど、あんたの質問に応えている暇はないんだ。他をあたってくれ」
――さっきから、自分の台よりも向こうの人をチラチラ見てますね。
「いや、全体の当たった台をチラ見してるだけさ」
――それにしては、あの女性ばかり見てるような…。もしかして好きな人?
「オレはクラスメイトを密かに想う中学生じゃないんだよ。仕事だって言ったろ」
――特定の女性を見つめる仕事? …なんかいやらしいですね。
「(無視) あっ、やって来たぞ」
――女性の隣に男性が座りました。笑顔で会話しています。常連同士ですかね?
「……(無言でゴソゴソと何かを動かしている)」
――もしかして隠し撮り!? いくら好きでも、それはいけません。
「静かにって言ったろ! たぶん、あの2人は店を出るぞ」
――……本当だ! 行動を把握しているなんて、ストーカーですね。
「もう何でもいいわ。それじゃオレも出るから」
――2人の後を追うんですか。さすがストーカーだ。
「決定的な証拠を掴まないとな。しっかりと自分の罪を知ってもらわないと」
――決定的な証拠? 罪? もしかして、あの女性の浮気調査をしている?
「今ごろ気づいたのか。そうだよ」
――ということは、探偵さんですか。
「いや、探偵の真似ごとをやっているだけさ。今だけな」
――本当のご職業は違う?
「証拠を掴めそうなチャンスを伺って、会社の有給を取ってる」
――なぜそこまでするんですか?
「あの女性、オレの妻だからな」
AMさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。