1996年12月に「初代」が登場してから26年。
令和の時代に移り変わっても、ジャグラーシリーズは常に多くのファンを魅了し続けている。
人気の要因を語る際、多くの人間は「シンプルなゲーム性」「ジャグ連における出玉増加の快感」などを挙げるだろう。
もちろん、それらは誰もが垂涎する最大の魅力だ。
しかし、人間の性格や嗜好は十人十色。多様性にあふれているこそ、ジャグラーとの「接し方」「打つ理由」「熱量」なども人それぞれで異なる。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.28 フーテンのジャグ】
■日時:2022年1月某日(火) 14:00
■場所:東北地方・某県
■取材対象:ACさん(推定52歳・男性・自由業)
※了承を得た上でインタビューしています(フィクションも含まれます)
――Youは何しにジャグラーへ?
「お嬢ちゃん、暇なのかい?」
――え? いや、これも仕事の一環でして。
「へへっ、そうか。昼間っからパチンコ屋でフラフラして、おいらと同じ人種だな」
――ちなみに、ご職業は?
「まぁそうだな、自由業ってとこか。全国あちこちに行って商売してる」
――何を売ってらっしゃるんですか?
「そらぁ色んなものを売るよ。最近だとリンゴやイチゴが多いな。ほら、たまに軽トラを道端に置いて果物を売ってたりすんだろ? あれみたいなもんだ」
――ということは、果物屋さん?
「いや、良いブツが手に入れば、何だって売る。果物だけじゃなく、仏壇だろうがスニーカーだろうが、な。ヘヘッ」
――……珍しいお仕事ですね。で、なぜ今日はジャグラーを?
「暇つぶしだよ。全国どこに行っても、大体ジャグラーは置いてあんだろ? おいらみたいなもんには、パチ屋で一番安心できる台なんだ」
――勝ち負けは関係ない?
「バカ言っちゃいけないよ。負けても良いなんて考えながら打つヤツ、どこにもいやしないだろ? 暇つぶしだろうが何だろうが、男なら勝利を目指すのみだ」
――そりゃそうですよね、失礼しました。
「いいってことよ。それに今日はちょいと懐が寂しいからさ、一発出してやろうと思って張り切ってるんだ」
――懐が寂しいとは、ご商売がうまくいっていない?
「いいリンゴが手に入ると思ってたら、あの野郎がヘマしやがってさ。参っちゃうよ」
――あの野郎がヘマ?
「いや、こっちの話だ。とにかくさ、売るもんがないから暇だし、金の回りも良くないってこった」
――大変なお仕事ですね。
「毎日、朝から晩まで頑張っている労働者諸君とは違うからな。自由な分だけ、しんどい時期もあるもんさ。お嬢ちゃんの仕事もそうだろ?」
――似ている部分はあるかもしれません。
「おいらの見立ては当たってたわけだ。どうだい? 似た者同士、商売を一緒にやらねぇか?」
――いきなり言われても、私にはできませんよ。
「んなこたぁねぇ。割が良いんだよ、おいらの仕事。ちょいと特殊なところからブツを仕入れるからさ」
――割は良いけど、仕事がない時期もあると。
「……まぁ、そうだな。そんときは、ジャグラーを打って勝てば良いだろ?」
――ジャグラーで負けたら、さらに苦しくなりますね。
「だけどさぁ、仕事もジャグラーも一発の夢があるじゃねぇか」
――今の仕事をしていたほうが得な気がします。危ない橋は渡りたくないし。
「……お嬢ちゃん、それを言っちゃおしまいよ」
ACさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。