本格的な秋が到来し、地域によっては冬の足音も聞こえ始めた。
外の空気はひんやり冷たく、どこか気持ちも落ち着く季節だが、ジャグラーのシマは相変わらずプレイヤーたちの熱気に包まれている。
彼らの頭のなかにあるのは、できるだけGOGO!ランプを光らせること、それに伴って多くの金銭的な見返りを得ることだろう。
しかし、きっとそれだけでない。回胴式遊技機としての楽しさや、実質的なギャンブル要素を省いたところにも、必ずや「打つ理由」が存在するはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.25 憧れのジャグラー軍団長】
■日時:2022年11月某日(金) 13:00
■場所:信越地方・某県某市
■取材対象:Zさん(推定21歳・男性・無職)
※事前に了承を得た上で、インタビューした体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「あ? 勝つために打ってるわ」
――勝敗以外の理由はあります?
「んなもん、あるわけねぇよ。今日は絶好のイベ日だし」
――絶好のイベ日?
「11月11日、ゾロ目の日は必ず出すんだよ、この店。もちろん公表はしてねぇけどな」
――そうなんですか。
「しかも、台番号がゾロ目ならほぼ鉄板。ほら、見てみ」
――おっ、あなたの台はゾロ目ですね。
「今日は整理券のヒキも良かった。今のところ、ブドウの確率もいい感じだわ」
――しっかり立ち回っているんですね。
「ジャグラーだけじゃなく、ほとんどの台の立ち回りは頭に入ってる。それに半径50kmぐらいのパチ屋の情報も。そうじゃないと指示できねぇし」
――指示できない?
「おれ、軍団を作ってんだ。そのリーダー」
――スロプロ軍団を率いている?
「あ、ちょっと待って。下の奴からのLINEが溜まってるから返事するわ。『お疲れ様です…』っと」
――丁寧な返信です。
「まぁね。あまり厳しくすると人が離れるし、甘くするとナメられる。けっこう辛ぇわ」
――軍団の人数はどれぐらい?
「ん? え~っと大体30人ぐらいじゃなかったかな。いや、300人はいるか」
――300人!? メンバーの金銭的なルールは?
「ん? あぁ、ゴリ押しだよ。みんなで勝ち負けの金額を分けてる」
――ゴリ押しじゃなく、ノリ打ちでは?
「う、うちらはゴリ押しって呼んでるから」
――意味が全然違いますけどね。
「ちょっと待って。あいつ、また変なLINEしてきやがったわ。『お疲れ様です。こちらはゾロ目台を取れました。今日は返済できそうです』っと」
――やっぱり腰の低いリーダーです。
「まぁね。……あ、お疲れ様です!!」
――あれ、誰か来ました。
「橋本さん、調子はどうっすか? ……あ、はい、いや、この台はおれが朝から並んで……わかりました。リーダーには逆らえないっすもんね……」
Zさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。