人々の生活に根を下ろし、常にギャンブル的興奮とエンターテインメントを提供し続けるパチンコホール。
そのなかで、もっとも高い人気を誇る機種の一つはジャグラーシリーズだ。
今日も全国津々浦々のホールでは、多くの人間がGOGO!ランプの輝きを待ち望み、出玉に一喜一憂している。
基本的に彼らが求めているものは、できる限り多くのコインを特殊景品に交換することだろう。
しかし、それぞれが抱える背景を紐解いていけば、ギャンブルとは別の「打つ理由」が存在するはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.22 ジャグラー蟹工船】
■日時:2022年10月某日(月) 10:30
■場所:関東地方・某県某市
■取材対象:Wさん(推定31歳・男性・アルバイト)
※事前に了承を得た上で、インタビューした体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「……Zzz」
――寝てますね。じゃあ別の人に…。
「んはっ!! あれっ!? ああ、パチ屋か」
――あっ、おはようございます。
「お、あんた誰よ? おれの貯玉カードを盗もうとした?」
――いや、ジャグラーを打つ理由を聞きたくて。
「何だよ、それ。意味分かんねぇわ。それにしても、また居眠りしちゃったよ」
――よく打ちながら寝てしまうんですか?
「ああ、夜勤明けにそのままパチ屋へ来て、開店からジャグラーを打つことが多いから」
――夜勤明け? それは大変ですね。
「日勤の人が会社帰りにパチ屋へ行くのと同じ感覚だよ。時間帯が真逆なだけでさ。こっちは朝イチのメリットもあるし」
――朝イチから打つなら、ジャグラーじゃなくても良いのでは?
「もしAT機とか打って、夜まで出ちゃったりとか、出勤直前までヤメられない状況になったらどうすんのさ。寝ないでまた仕事に行かなきゃいけないだろ」
――いつでもヤメられるのが利点だと。
「良い台を掴めたら、ジャグラーでも夕方とか夜まで打っちゃうことがあるけどな。そのときは仕方なく、寝ないで仕事に行くわ」
――あまり無理せず、仕事が休みの日に打てば?
「……おれ、休みが一切ないのよ」
――そんな仕事、あるんですか? 法律的にアウトでは?
「正確に言えば、関連会社の夜勤も兼業してる。だから休みがない。そんでパチ屋にも行くから、4日ぐらい寝ないで働くこともある。そんときは血尿が出たわ」
――なぜ、そこまで働くんですか?
「正直しんどいけど、会社から言われたら断れない性格なんだよ。まぁ、それなりに給料も良いしさ」
――しんどいなら、別にパチ屋で遊ばなくても……。
「それとこれとは別。あんたも分かるだろ? 仕事だけの生活なんて耐えられない」
――ジャグラーを打つことがストレス解消にもなっていると。
「いくら眠くても、GOGO!ランプがペカると目が覚めるし、気持ちいいもん」
――ところで、なぜ今の仕事を始めることに?
「え? そりゃ一番の理由は金だよ」
――お金をたくさん稼ぐ必要があった?
「ああ、競馬とかパチスロとかの調子が悪くて、金を借りちゃって。今の会社には金融系の関連会社もあって、そこでちょっとね。だから余計に働かないと」
――返済は順調?
「……う~ん、まぁ、ぼちぼち。っていうか、イヤなことを思い出させるなよ……」
――睡眠時間を削ってまで、パチ屋に来ている場合じゃないのでは?
「そうだよなぁ……今日も19時には会社に行かないとぉ……」
――GOGO!ランプ、なかなかペカリませんね。
「Zzz…………」
Wさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。