社会的な表舞台には立たずとも、確実に日本を代表する文化の一つである回胴式遊技機。その中で、名実ともにNo.1の存在はジャグラーシリーズだ。
季節が移ろい、社会情勢などが変化しても、全国のホールでは常に大量のジャグラーが配置され、多くの老若男女が集っている。
彼らが目指す最大のゴールは、当然ながらギャンブルとしての成果を得ることだろう。
しかし、各々の思いや背景を深掘りしていけば、実際には金銭が絡まない「打つ理由」も存在するはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.20 ジャグラー社会学講座】
■日時:2022年9月某日(月) 14:00
■場所:東京都・某区
■取材対象:Uさん(推定46歳・男性・大学教員)
※事前に了承を得た上で、インタビューした体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「まずは私の名刺をお渡しします」
――○○大学社会学部の准教授? スゴイですね。
「いえ、大したことはありませんよ。ふふっ」
――准教授という仕事とジャグラーに関係が?
「現在進めている研究テーマがジャグラーなんです」
――具体的には?
「あまり難しい話をしても分からないと思いますけどね」
――すみません、素人でも理解できる範囲でお願いします。
「う~ん、どう説明すれば良いんだろ。だって貴女は社会学の基本を知らないですもんね?」
――……じゃあ、もう結構です。さよなら。
「ちょ、ちょっと待って。今から話しますから」
――最初からそう言ってください。
「簡単に言えば、ジャグラーの客層や稼働状況などを調べることで、日本人の行動形態の時代的な変化をリサーチしています。同時に日本経済のマクロ的観点や心理学などもコンシダレーションしながら、社会行動学をより立体的にしようかと」
――すみません、全然分かりません。
「そうですか? 分かりやすく言ったつもりなんですけどねぇ」
――……ありがとうございました。それじゃ。
「ちょ、もう少し説明させてください」
――なんですか、本当は構ってほしいんじゃ?
「私がジャグラーを打つ理由ですけど、これはフィールドワークの一環です」
――横文字を多用せず、日本語で言ってください。
「フィールドワークとは、実際に現地の状況を見たり、現場の声を聞いて、研究に役立てることですね」
――それぐらい知ってますけど。
「すみません…。つまり、私はジャグラーを打ったり、いろいろ調べながら、日本という社会がどのようなものかを調べているわけです」
――何となく分かりました。研究を始めた理由は?
「実は学生時代、ジャグラーにハマりまして。勉強も疎かになってしまい、大好きだった彼女とも別れて。なぜ自分はここまでジャグラーが好きなのか、いろんな角度から研究したくなったんです」
――ダメな学生だったんですね。
「……はい。今も単純にジャグラーが打ちたいだけかもしれません。フィールドワークとか言っていますけど、これしか楽しいことがないんですよね…」
――そうですか。
「どうして私はこんなにもジャグラーのことが好きなんでしょう? 貴女、理由を知りませんか? もう少しお話して、私や日本のことを分析してくれませんかね?」
Uさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。