表面上、複雑で難解なシステムは一切なく、あくまでもシンプルなゲーム性で人間の本能を刺激し続けるジャグラーシリーズ。
北海道から沖縄まで、今日もジャグラーのシマには多くの信者が集い、ほとんどの者が余計なことを考えず、GOGO!ランプが輝く瞬間を待ち望んでいる。
彼らが望むものは、ゲーム性の気持ち良さを存分に味わうこと、そして金銭的な見返りを得ることだろう。
しかし、心理的な深層部を探索してみれば、きっとギャンブル以外の「打つ理由」が存在するはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.18 パブロフのジャグ】
■日時:2022年8月某日(月) 16:00
■場所:北関東某県・某市
■取材対象:Sさん(推定45歳・男性・アルバイト)
※事前に了承を得た上で、インタビューした体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「おお、おめぇ久しぶりだっぺな! いきなり変な質問してどうした? また新しいネズミ講の仕事でも始めたんけ?」
――初対面ですので、人違いです。
「ありゃりゃ、ゴメンな。で、質問は何だっけ?」
――どのような理由でジャグラーを打っているんですか?
「特別な理由はねぇけど、なんだか好きなんだよ。もう10年以上は打ってる。たぶん、生涯のトータル収支も浮いてるわ」
――どれぐらい浮いている?
「軽自動車が買えるぐらいは勝ってると思うわ。いや、最近は新車の軽自動車も高いから、走行距離20万キロぐらいの中古のクラウンだべな」
――よく分かりませんけど…。で、勝利の秘訣は?
「…あ!! ちょっと席を外すわ。待ってて」
――約3分経過。戻られましたか。ちょうどチェリーが停止していますね。
「気づいた? これが勝利の秘訣だっぺよ」
――どういうことですか?
「左リールにチェリーが止まったら、おれは必ずトイレに行く。第3停止でGOGO!ランプが光っても、光らなくても、必ずだ。これで勝ってる」
――ジンクス的なこと?
「チェリーが成立すると、内部の乱数取得のリズムが少し変わる。そこでトイレぐらいの休憩を挟むと、ボーナスフラグを一本釣りしやすくなるんだわ」
――それで勝てるなら、皆さん簡単に勝てちゃいますね。
「いや、やり続けることが難しいんだよ。毎回、チェリーが止まるたびにトイレへ行くなんて、あんたできっか?」
――たしかに大変ですよね…。
「んだべ?…あ!! またチェリーだ! ちょっと待っててな」
――約3分経過。おかえりなさい。あのー、毎回トイレでは出すんですか?
「そりゃ出ないときもある。正直、自分でも『何やってんだべ』と思うこともあるわ。でも、もう体に染み付いているから、トイレに行かないと気が済まねぇんだ」
――それにしても、なかなかボーナスが当たりませんね。
「あんた、短気だな。通常の確率よりも少しだけアップする攻略法だから、地道にやり続けることが大切なんだよ。それで最終的な結果が付いてくんの。わがっか?」
――すみません。
「いや、いいんだ。…よし、またチェリーだ!! ちょっと待ってて」
――約3分経過。すみません、今日はありがとうございました。
「面白い記事にしてよ。…あ! 隣の台でチェリーが止まった!」
――隣の台は関係ないですよね?
「やっぱりトイレに行きたくなっちゃうんだよ…。あれ!? あんたのボールペン、何だそれ?」
――ジャグラーの絵柄が書かれたボールペンです。
「チェリー絵柄があっぺよ!! もうダメだ、ちょっと行ってくるわ!!」
Sさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。