シンプルなゲーム性と魅惑の告知ランプ、そして一般的な確率論をあざ笑うかのようなボーナス連チャンを見せることで、人々の心をがっちり掴んでいるジャグラー。
今日も全国津々浦々のホールでは、ジャグラーのシマに多くの人間が集い、自らの欲求を胸に秘めながら静かに台と向き合っている。
彼らの最大の目的は、ゲーム性を楽しみつつ、最終的に金銭的な見返りを得ることだろう。
しかし、それ以外にも周囲の人間には計り知れない「打つ理由」がきっと存在するはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.17 ジャグラーがときめく魔法術】
■日時:2022年8月某日(水) 14:00
■場所:東京都・某区
■取材対象:Rさん(推定38歳・女性・無職)
※事前に了承を得た上で、インタビューした体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「何ていうのかな、コンサルティング的な?」
――コンサルティング?
「皆さんがジャグラーを幸せに打てて、そして勝てるようにアドバイスしてあげてるのよ」
――具体的には?
「たとえばさ、部屋をキレイに片付けすると運気が上昇する。これは世の常識じゃない?」
――そうですか?
「だから、ジャグラーもキレイにしてあげるの」
――どういうことですか?
「パチンコ屋さんには、大体おしぼりが置いてあるでしょ。あれを使って、台をキレイに清掃する。『いつもありがとう』って心を込めて、こまめにね。そうすれば運気も上がるし、ジャグラーも喜ぶ」
――ジャグラーも喜ぶ?
「あら、知らなかったの? ほら、まずはGOGO!ランプの辺りをこうやって拭くじゃない? そうすると、声が聞こえるのよ」
――どんな声が?
「…サンキューって言ってるわ」
――私には聞こえませんけど。
「そりゃそうよ。貴女は拭いていないもの。とにかく台も喜ぶし、打っている人の運気も上がるから、winwinでボーナスも当たるってこと」
――クライアントというか、生徒さんは結構いる?
「これまでに500人以上は教えたかな。今このお店にも5人ぐらいいるわね」
――コンサル料は?
「もちろん無料よ。…ちょっと野村さん! いきなり打たないで、ちゃんと拭いてあげなきゃダメじゃない!」
――お隣も生徒さんですか。
「そうよ。あっちの木村さんも、もっとあっちにいる中西さんも、私の生徒ね」
――誰も台をキレイにしていませんけど。
「最初はみんな、真面目にやっていたんだけどね…」
――それって効果がないのでは?
「みんなさ、ちゃんと心を込めていないのよ。しっかり台に語りかけたうえで、キレイにしてあげないと」
――Rさんが打っている台も、なかなか当たりませんね。
「あ、ジャグラーが『ゴメン、今日は体調が良くない』って言ってる。心を込めていれば、こうやって意思の疎通もできるのにね。じゃ、さっさと帰るわ」
Rさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。