多くの人間の日常に深く食い込み、常に喜怒哀楽を提供し続けるパチスロ・ジャグラーシリーズ。
今日も全国のホールではGOGO!ランプの輝きを待ち望み、金銭的な見返りを求める者たちがあふれている。
しかし、彼らはギャンブル的な要素だけでジャグラーのシマに集っているわけではない。
欲望の表面を覆う分厚いベールをゆっくりと剥がしていけば、「真の理由」がきっと存在し、深い人間ドラマも垣間見えるはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.16 体育会ジャグラー部の造反】
■日時:2022年7月某日(月) 11:00
■場所:関東地方・某県某市
■取材対象:Pさん(推定20歳・男性・学生)
※事前に了承を得た上で、インタビューした体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「自分は先輩の命令で打ってるっす」
――どういうことですか?
「自分は○○大学の柔道部1年生で寮生活っす。ある先輩のために、ジャグラーの良さげな台を探しておくっすよ。自分で打ちながら」
――高設定台を探して、見つけたら先輩に譲ると?
「そうっす。その後に先輩が勝ったら自分も小遣いがもらえます。ちょっとしたバイト感覚っすね」
――もし先輩が負けたら?
「…厳しい練習が待ってるっす。だから台選びは気が抜けないっす」
――あなたの勝負資金は自腹?
「そうっす。先輩に譲るまでに勝った場合は、そのまま自分のものっすね」
――良い台を見つけたら、先輩に言わずに打てば良いのでは?
「…え? そ、そうっすけど、でもバレたら怖いっすよ」
――ところで、大学の授業は?
「何とかなるっす。授業に出ている場合じゃないっすもん」
――今打っている台は調子良さそうですけど、そろそろ先輩に譲る?
「そ、そうっすね。でも、もう少しだけ…」
――やっぱり、打ち続けたい?
「そりゃそうっすよ。なんで自分が見つけた台を先輩に譲らなきゃいけないんすか? 年上だか何だか知らないけど、んなもん本当は関係ないっす」
――私もそれで良いと思います。
「だいたい、先輩の命令が絶対なんて今どき古いっすよ。ジャグラーだって他の機種だって柔道だって、自分の力で勝つものっす」
――ちなみに、その先輩は柔道が強い?
「聞かなくても分かるっすよね? 後輩にこんなことを頼むヤツなんて、ロクな…………あっ、先輩!?」
――あ、この方ですか。
「先輩、ちょうど連絡しようと思ってたっす! そしたらこの女の人が先輩の文句を言ってきて、それで自分も反論してたら…」
――私は何も言っていませんけど。
「この人、しらばっくれてるっす! 先輩、信じてください! …え? 今日は先輩が別の店で良い台を見つけたから、譲らなくて良いって?」
――良かったですね。
「だったら早く言えよ…す、すみません、つい心の声が!!」
Pさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。