いつの時代でも、どの年代にも愛され続ける回胴式遊技機・ジャグラー。
今日も日本全国のホールでは、GOGO!ランプが幾重にも瞬き、多くのプレイヤーが心躍らせている。
彼らが一番求めているのは、ボーナスに伴うコインの増加と、金銭的な成果だろう。
しかし、きっと他にも「打つ理由」は存在し、じっくりと話を聞けば色濃い人間ドラマが見えてくるはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどんな物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.13 スピリチュアルジャグラー師】
■日時:2022年6月某日(月) 11:00
■場所:東京都・某区
■取材対象:Mさん(推定68歳・女性・無職)
※事前に了承を得た上で、インタビューした体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「無礼者! 消え失せろ!!」
――えっ、えぇ!? すみません…。
「あら、ごめんなさい。貴女のことじゃないのよ」
――じゃあ誰を叱っていたんですか?
「ジャグラーよ。正確に言えば、ジャグラーに憑いている悪霊」
――ジャグラーに悪霊が?
「ジャグラーってさ、みんなに愛されているけど、その分だけ恨まれることもあるのよ。可愛さ余って憎さ百倍っていうやつ。だから悪い生霊が結構憑いていて、あたしがそれを追い払っているの」
――スピリチュアルな能力を持っている?
「小さい頃からそうよ。だからジャグラー以外の除霊や占いもしてるわ」
――なぜジャグラーの悪霊を払うように?
「あたしがジャグラーを大好きだから。悪霊がいると、コインも思うように吐き出してくれないし、打っていて気持ち良くないの」
――除霊のコツは?
「まずはGOGO!ランプを優しく撫でてあげることが重要ね。それと第3ボタンを離す前には台に話しかけるの。どんな言葉かって? 企業秘密よ、フフフ」
――さっきの無礼者発言は?
「ああ、今日は悪霊がしつこくて、もう2万円も使っちゃったからね。だから叫んじゃったわ」
――……除霊の効果がないのでは?
「あたしだって人間だから、いつもパーフェクトにはいかないわよ。ただ、95%ぐらいは大丈夫。除霊できれば勝てる」
――それなら、ほとんど連戦連勝?
「も、もちろんそうよ。どう? あたしの能力を買ってみない?」
――能力を買う?
「あたしが除霊した台を譲ってあげるから、2万円。新規会員のみのサービス価格よ。そして今なら、あたしがデザインしたパワーストーンも5万円であげちゃうわ。特別だからね?」
――いえ、遠慮しておきます。
「そう、後悔すると思うけど。そういえば貴女、最近悩みを抱えてない? 人間関係の。あたしは顔で分かるのよ。その人の現状と未来が」
――大体の人は多かれ少なかれ悩みがあると思います。
「それにしても、この台の悪霊は本当に手強いわね。もう2万5千円よ?」
――自分の現状や未来は占えないんですか?
「…………無礼者! 消え失せろ!!」
Mさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。