社会情勢や景気がいくら不安定でも、常に変わらず娯楽を提供する空間――。
今日も日本全国津々浦々のパチンコ店では、ジャグラーのシマに多くの人間が集っている。彼らの最大の目的は、おそらく財布の中身を増やすことだろう。
しかし、きっとそれ以外にも十人十色の「打つ理由」と、透けて見える「人間模様」があるはずだ。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて今回はどのような物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.9 ジャグプロへの憧れ】
■日時:2022年4月某日(月) 10:00
■場所:東京都・某区
■取材対象:Iさん(推定20歳・男性・学生)
※事前に了承を得た上で、インタビューした体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「おれ、スロプロをやってるんだよね。今一番喰えるのはジャグラーだから、それで打ってんの」
――なぜスロプロの道へ?
「なぜって…なんかカッコよくね?」
――そうですか?
「言いたいことは分かるよ。でもさ、無頼派っていうの? ギャンブルで喰っていくのはロマンがあるっしょ」
――ご家族などの反応は?
「今は実家から離れて一人暮らし。親はちゃんと学校に行ってると思ってるんじゃない?」
――実際は学生さん?
「今年で大学2年生。単位は全然取ってないけど。幸か不幸か、近所にこの美味しいホールがあったから、それもスロプロになった一因かも」
――収支は順調?
「う~ん、ぼちぼちかな。まぁ負けても親から仕送りがあるし、家賃も払ってくれてるしさ」
――そ、そうですか。
「やっぱさ、ジャグラーの設定看破って難しいじゃん? 小役をカウントしたって、正確には分からないし」
――毎回、ブドウとかを数えている?
「…え、ベルじゃないの?」
――逆にベルを数えるのは大変では?
「もちろん、ボーナス出現率だって見てるよ。設定6はBIGとREGの比率が1:1。これって意外と大事なんだよなぁ」
――ちなみに今打っているファンキー2は違いますけど?
「い、いや、知ってるよ。っていうか、勝てるかどうかなんて運じゃん!」
――プロだから、遠くのホールに遠征したりも?
「えんせい…って何?」
――誰かに勝ち方を教わったことは?
「ほとんど動画。あとは独学だよ。ほら、スロプロって孤独だから」
――もしかして、動画を観てスロプロに憧れている人?
「ちょ、ざけんなよ! 俺はパチスロで喰ってるの! ほら、今日だってBIGを2回も引いて、大勝ちだもんね」
――がんばってください。
「言われなくたってやるよ。よし、じゃあそろそろ帰ろうかな。…お姉さん、この店の換金所ってどこにあるんだっけ?」
Iさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。