単なるギャンブルという概念を超え、老若男女に愛され続ける回胴式遊技機・ジャグラー。
彼らが「打つ理由」を丹念に深堀りすれば、そこには想像もできない人間ドラマが待っているかもしれない。
この企画では、自称ジャーナリスト・板橋北子(いたばしきたこ)がゲリラ取材を敢行し、「Youは何しにジャグラーへ?」と問う。
さて、今回はどのような物語が紡がれるのだろうか――。
【Vol.3 悠々自適な年金ライフ】
■日時:2022年3月某日(火) 10:00
■場所:北関東某県・某市
■取材対象:Cさん(推定75歳・男性・無職)
※あらかじめ取材の趣旨を説明し、了承を得た後のインタビュー…という体のフィクションです。
――Youは何しにジャグラーへ?
「あぁ? 最近、耳が遠いんだよ。もっとデっけぇ声で話してけろ」
――どのような理由でジャグラーを打っているんですかぁ!!
「おお、この台は簡単だべ? 余計なことを考えなくて良いんだ」
――いつもジャグラーばかり?
「パチンコ屋に来たときは、大体コレだな。他には目もくれねぇ」
――パチンコ屋さんに来る頻度は?
「月に2、3回ぐらい。年金支給日の後は必ず来る」
――常連さんではないんですね。
「んだな。でも、仲の良い客はいっぞ。え~っと、名前は何だっけか。ほら、趣味でナメコを栽培してる人」
――そう言われても分かりません。
「んだ、中山さんだ。最近見ねぇなー。あ、去年亡くなったんだ」
――それは残念です。
「他にも知り合いは結構いんぞ。でも、最近みんなゲームセンターに行ってんだ。ジャスコに朝から並んで、コインゲームのパチンコとか打ってよ」
――イオンですね。
「あれの何が面白いんだべな。まぁ、そんなに金がかからねぇし、のんびり遊べっかから良いんだべな。オラはパチンコ屋のほうが良いけど」
――Cさんはパチ屋のジャグラーで勝っている?
「いや、負けてる。いつもうちの婆さんに怒られてるわ。ガハハ!」
――大丈夫ですか?
「そんなに無理な勝負はしねぇから。そういや姉ちゃん、年金支給日は出ないって言う奴がいっけど、あれは本当け?」
――私には分かりません。
「何だ、教えてくれたって良いべよ」
――お店によって違うと思います。ところでお仲間も減って、心細いのでは?
「仲間じゃなく、オラはジャグラーに会いに来てんだ。たしかに最近は知り合いが減った。なんでか分がっか? みーんなジャスコに行ってんだよ!」
――さっきお聞きました。
「いやぁ、とにかくジャグラーは良いわ。年寄りのオラにだって簡単だから、誰かに頼る必要がねぇべ? 詳しい奴が近くにいなくても、1人で気軽に楽めんだよ」
――気楽さが良いと。
「うおっ! ガコ!っと鳴ってランプが光った!! やっぱりこの瞬間が最高だわ! ……そんで姉ちゃん、ちょっと7を揃えてくれねぇが?」
Cさんに幸あれ。
Youは何しにジャグラーへ?
板橋北子(いたばしきたこ)がアポ無し取材を敢行し、ジャグラーを打っている人々に「Youは何しにジャグラーへ?」と問う、インタビュー形式のコラム。「ジャグラーを打つ理由」を聞き、ドラマチックな人間模様や波乱万丈の物語を紹介していく。