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第1章「ジャグラーは自由の象徴」【早紀のジャグラー在日遊技録】

2021年6月15日

「好的」

順押しで右リールを停止させ、そのままボタンを押しっぱなしにすること約5秒。ゆっくり指を離すと見事に「GOGO!ランプ」が点灯し、私は中国語で小さく「OK」と呟いた。

周囲にはほとんど客がおらず、シマの角台に1人だけ冴えない中年男性がいる。この店で数回見たことがあるから、それなりの常連なのだろう。

ただ、私は一度も話したことがないし、もちろん「私のお客さん」でもない。何も気兼ねする必要はない環境だったから、もっと大きな声で喜びを爆発させても良かったかもしれない。まぁ、想像はしても実行する勇気はないけどね。

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それにしても、最近はパチンコ店も客が減ったように感じる。私がジャグラーを打ちはじめて約20年、これほど閑散とした光景はあまり見たことがない。

詳しいことは分からないが、これはどうやらコロナの影響だけではないみたい。パチスロの決まりが変更されて、出玉が大きく減ってしまったことも人気凋落の一因だという。

たしかに、今私が打っている『アイムジャグラーEX』も、従来のジャグラーよりボーナスの出玉が少ない。その代わり当たりやすくて通常時の小役も揃いやすいようだけど、ボーナスが終わった直後の下皿を見ると、やはり物足りなさを感じてしまう。

日本では、どうしてこのような決まりにしたのか。先日も「私のお店」へ来たお客さんに聞いてみた。すると「日本の政治家が…」「ギャンブル依存症が…」と小難しい話ばかりで、私には「钦邦坎彭(チンプンカンプン)」だった。

じゃんじゃん出る機械ならお客は喜ぶし、きっとパチンコ店も儲かるはずなのに。そんな単純なものではないことも何となく理解できるけど、他の制度も含めて、日本という国は不思議だ。

とは言え、私にとってジャグラーは魅力ある台であることに変わりない。「GOGO!ランプ」が点灯するかどうかに全てを賭ける潔いゲーム性は、外国人でも分かりやすく、没入感もあって、嫌な日常を忘れさせてくれる。

常連客のコミュニティもいくつかあり、私も当初はかなり助けられた。ジャグラーのシマやパチンコ店を離れても、そこでの人間関係が役立つ場面が結構あった。

私が知る限り、中国にこのような遊技、施設は存在しない。日本ではパチンコ・パチスロに対して批判的な人も結構いて、「ギャンブル」「社会悪」という一言で済ましてしまう人もいるようだ。

でも、パチンコ店はそれだけに収まらない、日本独自の自由、日本独自の文化だと思う。少なくとも私はパチンコ店、そしてジャグラーに助けられてきたのだから、感謝こそすれ批判などできない。

ギャンブル好きな人間だからこそ、ポジティブな感情になることも否定しないけど。

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振り返れば、人生の節目にはいつもジャグラーがあった。結婚のために来日し、離婚して、スナックでの仕事を始めたとき。東日本大震災のとき。そして、コロナ禍。

全体で見れば、日本での生活は泣きたい場面のほうが多かったかもしれない。中国の実家に帰りたいと思ったことは何度もある。日本人全員を疑心暗鬼の目で見てしまった時期もある。

でも、ジャグラーに出会えたおかげで乗り切れた。

大げさかもしれないけど、ジャグラーという小さなキッカケによって、私にとっての日本社会は大きく広がり、私自身の視界も広がったのだ。

日本の小さな地方都市で、ジャグラーと共に過ごした約20年の出来事。別に大したことはないけど、これまでの感謝の意味も込めて、皆さんにお伝えしたい。

その前に、さっき光った「GOGO!ランプ」の結果を早く確認しよう。初心者の頃に難儀した目押しはもう一切問題なく、パパっとボーナスを揃えるとREG。

私は落胆し、少しだけ大きな声で「对不起」と口走った。

(第2章へ続く)

早紀のジャグラー在日遊技録

在日中国人女性の人生とジャグラーが絡み合うドキュメンタリー小説。中国人女性の人生に多大な影響を与えるほどのジャグラーはどのように関わっていくのだろうか…。

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